【全編5話】記憶喪失だった母が、殺人事件の容疑者として逮捕されました

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【1話:消えた記憶と突然の逮捕】

母の記憶喪失が始まったのは半年前からだ。医師は「ストレスによる解離性健忘」と診断した。日によって症状の程度が変わり、良い日と悪い日の差が激しい。

朝、いつものように声をかける。

「お母さん、おはよう」

母は少し困惑した表情を浮かべる。

「あら、美咲ちゃん。おはよう」

安堵のため息が漏れる。今日は私の名前を覚えていた。

キッチンで朝食の準備をしていると、母が話しかけてきた。

「ねえ、美咲ちゃん。今日は何曜日だっけ?」

「金曜日だよ、お母さん」

母は小さくうなずいた。カレンダーを見つめる目が悲しげだ。

突然、玄関のチャイムが鳴った。

「はーい」

母が玄関に向かう。ドアを開けた瞬間、驚きの声が上がった。

「奥山さん、逮捕します」

警官の厳しい声が響く。何が起きているのか理解できない。

「お母さん!」

私は玄関に駆け寄った。母は既に手錠をかけられていた。

「美咲、大丈夫よ。きっと何かの間違い」

母の言葉とは裏腹に、警官の表情は冷たかった。

「殺人容疑です」

その一言で、私の世界が音を立てて崩れ始めた。

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